「医者が言うんだから大丈夫」——そう思ってすべてを任せていた頃が、私にもあった。
でも、あの一言がきっかけで、私は動くことにした。
「違う薬です」
母の症状が悪化していた時期、主治医が薬を変えると言った。
「どんな薬ですか?」と尋ねた私に、医者はこう答えた。
「違う薬です」
それだけだった。
さらに追い打ちをかけるように言われたのが、「ボーッとさせれば大人しくなる」という言葉。当時の母は攻撃性が強く、「死ぬ」「殺す」という言葉が飛び出すこともあった。だからこその提案だったのだろうが、私には受け入れられなかった。
患者の家族として、疑問を持ってもいいはずだ。説明を求める権利があるはずだ。でも、あの場では何も言えなかった。
地域包括支援センターへの相談
もやもやを抱えたまま、地域包括支援センターの「安心相談室」に相談した。
困っていることを話すと、担当者はこう言った。
「大っぴらには言えないんですけど…セカンドオピニオン、されましたか?」
そこから話が動いた。具体的な病院名、訪問診療の先生の紹介、費用まで丁寧に教えてもらえた。こういう情報は、自分では調べにくい。相談してよかったと思った瞬間だった。
セカンドオピニオンは、思ったより大変じゃなかった
「病院を変えるのは大変そう」と思う方も多いと思う。私も最初はそうだった。
でも実際は、普通の初診として受診するだけでよかった。
認知症はがんのように「前の病院のデータを揃えて転院」という必要性が高いわけではない。薬手帳を持参すれば、これまでの経緯はほぼわかる。長谷川式スケールの検査やMRIはもう一度行うことになるが、定期的にやるものなので、病院が変わっても大きな問題ではない。
強いてデメリットを言えば、前の病院で処方された薬1ヶ月分が無駄になったくらいだ。
父へのハードルを下げる工夫
父は介護疲れもあり、「病院を探す余裕がない」という状態だった。
そこで私たちがやったのは、選択肢を絞って提示することだ。
「ここかここ、どっちにする?」と二択で聞いた。それだけで、父の表情が少し楽になった気がした。疲れているときは、ゼロから考えることが一番つらい。選ぶだけでいい状態を作ってあげることが大切だと気づいた。
今の病院は、家族にも寄り添ってくれる
病院が変わって気づいたのは、医者との関係そのものが変わったということだ。
今の先生は、薬の説明だけでなく、家族としての接し方や声のかけ方もアドバイスしてくれる。「この言葉はNGです」「こういう場面ではこう対応するといい」——アンケートや日々のやりとりを通じて、具体的に教えてくれる。
認知症の介護は、薬だけで解決するものではない。家族がどう関わるか、どう声をかけるか、その積み重ねが毎日の暮らしに影響する。そういうことを一緒に考えてくれる医者に出会えたことが、今は何より心強い。
薬が変わって1ヶ月後
新しい病院で薬が変わり、1ヶ月ほど経った。
「死ぬ」「殺す」という言葉は、聞かなくなった。感情の上下はまだあるし、穏やかとは言い切れない。でも、あの攻撃的なピークは確実に過ぎた。
父の表情も、少しだけ穏やかになった気がする。
「前よりはマシ」——長女のその一言が、今の正直なところだ。
認知症の主治医に不満を感じたら
最後に、同じような状況の方へ伝えたいことをまとめます。
- 地域包括支援センターに相談する:病院の紹介など、思わぬ情報が得られることがある
- セカンドオピニオンは初診でOK:薬手帳を持参するだけで大丈夫なことが多い
- 家族への提案は二択で:疲れた介護者にゼロから考えさせない
- 医者に質問する権利は患者側にある:「違う薬です」で終わらせない
- 家族の接し方も一緒に考えてくれる医者を選ぶ:薬だけでなく、介護する側へのサポートも大切
「医者だから」という言葉は、信頼の表れでもある。でも、それが思考停止につながるとしたら、大切な家族を守れないこともある。

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