母のこと

母が赤ワインをシンクに流した日——あれは前兆だったと、今なら思う

あの頃の母は、よく怒っていた。理由がよくわからない怒り方をすることが多かった。お金のこと、食事のこと、父のこと——何かにつけて、ぷりぷりしていた。当時の私には、理由がわからなかった。実家はお金に困っていなかった。母にも自由になるお金があった...
父のこと

「黙って死ぬのを見ててくれ」——施設の話ができないまま、時間が進んでいく

「黙って死ぬのを見ててくれ」父がそう言ったとき、私は黙っていた。何を言っても無駄だと思った。反論する言葉も、慰める言葉も、出てこなかった。ただ、そうは言っても、呼ばれたらのこのこと行くんだろうな——と、少し嫌な気持ちになった。施設の話ができ...
父のこと

父のゴルフと、何度もかかってくる電話——介護する人にも、息をする時間が必要だ

父がゴルフを始めたのは、50歳のときだった。それまでは仕事一筋で、趣味らしい趣味はパソコンくらいしかなかった。ゴルフを始めたのは、母の病気が発覚するより前のことだ。今から思えば、その頃から少しずつ始めていたことが、結果的に父の唯一の逃げ場に...
父のこと

認知症の妻に怒鳴られる夫——それでも怒らない父を見て、私が思うこと

「汚い男だ」母がそう言ったのを、私は聞いた。認知症になってから、母の言葉はときどき刃になる。長年連れ添った夫に向かって、信じられないような言葉を投げつける。「こんな人といても仕方ない」「出て行け」——そういう言葉が、日常の中に混ざってくる。...
父のこと

父が限界だったあの日——ぎっくり腰でも「大丈夫」と言い続けた人のこと

母が手首を骨折したのは、ある夕方のことだった。転んで骨を折った。病院で処置してもらって、ギブスをした手で帰ってきた。でも母は、そのことをすぐに忘れてしまう。痛みでハッとして、父に「手が痛い」と訴える。父が説明する。また忘れる。また訴える。そ...
父のこと

父の一日——認知症の妻と二人きりで過ごすということ

父の一日は、朝5時半に始まる。まず犬の散歩。まだ薄暗い時間に、リードをつけて外に出る。帰ってきたら、朝食の準備。卵を割って、味噌汁を温めて、ご飯をよそって。母はそのうち自分のタイミングで起きてくる。そして、まるで自分で準備したかのように食卓...
介護サービス

離れて暮らす親の介護、どう見守る?「おやとこ」という選択肢

母が一人で家にいる時間が、心配でたまらない。私は離れて暮らしている。父は同居しているが、仕事や通院で外出することもある。そういうとき、認知症の母が一人で何時間か過ごすことになる。何かあっても気づけない。転んでも、薬を飲み忘れても、誰かに連絡...
介護サービス

テレビの音が大きすぎる認知症の親——ミライスピーカーを試してみた

実家に帰るたびに、テレビの音がものすごく大きい。母が難聴になったのは、認知症の診断よりも前のことだ。補聴器を勧めても「うるさい、合わない」とすぐ外してしまう。だからテレビの音量がどんどん上がっていった。父も「これくらいじゃないと聞こえないみ...
介護サービス

認知症の親にGPSを持たせた話——ミマモルメで外出中の不安が少し減った

認知症の母は、今も一人で外に出ることがある。近所のスーパー、いつもの散歩コース——今のところはちゃんと帰ってくる。でも、帰りが遅くなることが増えてきた。「今日は大丈夫かな」と思いながら待つ時間が、少しずつ長くなっている。「迷子」と呼ぶのが正...
介護の知識

「家がやなんでしょ」——認知症の母の一言が、父の限界を教えてくれた

認知症の親を介護する父の疲弊に気づいた日の話。介護者が限界になるのは派手じゃない。表情が消えていく前に、家族が気づくことの大切さを介護経験者が記録しました。
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