友人のお父さんが、アルツハイマー型認知症と診断されて特別養護老人ホームを申請した。そして、入所まで10年かかった。
10年。その間、家族はどんな思いで介護を続けたのだろうと思う。
男性は入りにくい、という現実
特養の入所を難しくする要因のひとつが、性別だ。
男性の認知症患者は、症状が進行するにつれて、施設側が受け入れを慎重になるケースがある。理由のひとつは、セクハラ行為のリスクだ。女性の入所者やスタッフへの不適切な言動が起きやすいとされており、施設としても対応が難しい。
一方、女性は入所者や職員と比較的うまくやれることが多く、受け入れられやすい傾向がある。
また、要介護度が高すぎると「手がかかりすぎる」として後回しになることもある一方、要介護4程度で身の回りのことを少し自分でできる状態のほうが入りやすかったりもする。施設の体制や空きによっても違うのだが、「重くなれば入れる」というわけでもない、難しさがある。
「その時」が来てから申請しても遅い
特養の申請に踏み切れない家族は多い。
「まだそこまでじゃない」「施設に入れるなんてかわいそう」「自分でなんとかできる」——そういう気持ちが、申請を先延ばしにさせる。
でも現実として、申請してから入所まで数年待ちは当たり前。地域や施設によっては5年、10年になることもある。
申請することと、入所を決意することは別の話だ。「申請だけしておいて、その時断ることもできる」——そう考えると、少しハードルが下がるかもしれない。
気づいた時が、申請のタイミング。そう思っている。
うちの母のこと
うちの母は、体は若くて元気だ。
でも、言っていることが無茶苦茶だったり、物を投げたり、激しく怒鳴ったり、汚い言葉で詰ったりすることがある。
介護の現場では「認知症患者の人間の尊厳を傷つけるような言い方をしてはいけない」と言われる。それはそうだ。でも現実には、介護している家族のほうが、尊厳を激しく傷つけられていることもある。
一見まともそうに見える母が、そんな言葉を言う。外では誰もわからない。だからこそ、間違いが起きることもある。時々ニュースで聞くような出来事も、「わからんでもない」と父がこぼすことがある。
責めているわけじゃない。それだけ、追い詰められるということだ。
介護者を守ることが、介護を続けることにつながる
細く長く介護を続けていくために、いちばん大切なことは介護者が元気でいることだと思っている。
そのためにショートステイを使って、父に少し一人の時間を作ってほしいと思っている。母から解放される時間。ただそれだけでいい。
でも父は「そんなことしなくても良い」と言う。
その気持ちはわかる。長年連れ添ったパートナーを「よそに預ける」ことへの罪悪感。まだ自分でできるというプライド。「助けを求めること」への抵抗感。
でも、介護者が倒れてからでは遅い。
ショートステイは逃げじゃない。介護を長く続けるための作戦だ。
今、できることをやっておく
もし10年待つ可能性があるなら、今のうちに特養の申請を考えておくべきではないか——そう思い始めている。
まだ決断はしていない。でも、気づいた人が動き始めることが大切だとも思っている。
申請だけしておいて、その時に断ることもできる。そう自分に言い聞かせながら、次のケアマネとの面談で、少し話を出してみようと思っている。
在宅介護を続けるための選択肢
介護保険では対応できないサービス(通院の付き添い、夜間の介護など)が必要になることがある。そんな時は、自費の訪問介護サービスを活用することで、介護者の負担を減らすことができる。

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