同じ物を使っていただけなのに——認知症の母に“盗った”と疑われ、父にも誤解された話

母のこと

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両親との関係は良好。母は、私の事を本当に可愛がってくれていた。

同居生活、きっと上手くいくはずと思っていたけど、そうは行かなかった。

本当に残念だし、なぜなのか未だに納得がいかないけど…。

3年ほど経った今、言えることは、

病気だからしかたなかった。それしかない。

でも、せめて父には私が本当の事を言っている事をわかって欲しかった。

同じものを、10年以上使っていた

母は、私買ってきたスキンケア類、キッチングッズをとても気に入り、

母も同じものを使っていた。それは、2,3年とかではなく10年以上そんな風に生活していた。

だから、実家にあるモノと、私が自分の家から持ってきたモノは同じなのだ。

「なんであんたがソレ使ってるの?」

「なんであんたがソレ使ってるの?」と、怒るけど。

だってそれはお母さんが私の真似をして同じのを使ってるから。

父はそんな事を知ってか知らずか、娘が母親のモノを消費していると思っている。

娘が「シャンプー買ってきて欲しい」とこっそり言いに来た。

「おばあちゃんのは使わないで」と言われたらしい。

私が知っている母ではない

私が知っている母ではない!

絶対おかしい。

世の中理不尽な事は多い。でも、母がいつも味方でいてくれたから、頑張れた。

私は、人生最大の決断(離婚)をしようとしていた。

そんな母の振る舞いにとても傷ついたし、

味方にもなってくれなかった父を、許せないと本気で思っていた。

今思うと、私もある意味ヤバイ。

体重がみるみるうちに減り、背中に骨が浮き出て来た。

父も母も同じだった。

あとから知った、「物盗られ妄想」のこと

あとから知ったことだけど、これは「物盗られ妄想」と呼ばれる、認知症ではとてもよくある症状らしい。置いた場所やしまったことを忘れてしまう記憶障害に、「自分がおかしくなっているはずがない」という不安が重なって、「誰かに盗られた」という形で出てくるんだそうだ。

そして、一番胸に刺さったのはここ。この妄想は、一番身近で、一番頼りにしている家族が疑われやすいらしい。一番可愛がってもらっていた私が、一番疑われた。あれは母が私を嫌いになったわけじゃなくて、病気の仕組みそのものだった。

否定したり言い返したりするのは逆効果で、不安をさらに強めてしまうとも書いてあった。当時の私は知らずに「違うよ!」と必死に言い返していた。知っていたら、少しは違ったのかもしれない。

もし今、家族に「盗った」と疑われて傷ついている人がいたら、これだけは伝えたい。あなたが疑われるのは、あなたが一番近くにいるからです。

じゃあ、どう返せばいいのか

「否定は逆効果」と分かっても、じゃあその場でどうすればいいのか。あとになって、うちで分かってきたことを書いておく。

①一緒に探す。見つける役は、本人に譲る。「盗ってないよ」ではなく「一緒に探そうか」。そして見つけそうになったら、そっと本人が見つけられる場所に誘導する。家族が先に見つけると「あんたが隠してたんじゃないの」と、話が振り出しに戻ることがあるからだ。

②言い返さず、短くひとこと、事実だけ。「違う!」と説明を重ねるほど、母の中では「責められている」に変わっていく。正面から言い返すこと自体が、次の怒りの引き金になる(認知症の母が急に怒る——わが家で見つけた「3つの引き金」と、効いた対応)。

③その場を離れて、時間を置く。母の怒りは、急に始まって、急に消える。別の話題に変わった瞬間に、疑いごと消えていることも多い。まともに受けて立たないことは、逃げではなく対応だと、今は思っている。

「隠す」と「盗られた」は、セットで起きる

もうひとつ、あとから分かった仕組みがある。「盗られた」の前には、たいてい「隠した」があるということだ。

大事なものだから、しまう。しまったことを忘れる。無い。——「盗られた」の出来上がりだ。実際うちでは、母の部屋の袋物から、家計の財布も、父の下着も、裸のお札も出てきた。しまう場所も、しまったという記憶も、本人の中から消えている。

だから「盗られた」が始まったら、探し場所の見当をつけておくと、家族が少し楽になる。よくある隠し場所については、別の記事にまとめた(認知症の親がお金を隠す——よくある隠し場所と対応のコツ【介護経験者が解説】)。

それから、同じ「無い」が一日に何度も繰り返されるのは、意地悪でも当てつけでもなく、脳の仕組みによるものらしい。そのあたりは、こちらに書いた(認知症の親が何度も同じ話をするのはなぜ?——「財布がない」の裏にある仕組み)。

三年たった今

あの頃の私に、伝えたいことがある。

母は今、薬の調整が効いて、あの時期よりずっと落ち着いている。私の「買い物付き合ってくれる?」に「いいよ」と返してくれる日もある。

正直に書くと、一緒の外出は今も大変だ。母は「待つ」が効かない。店員さんとの会話がかみ合わなくて、うまくフォローを入れないと、母の自尊心を傷つけてしまう。私は私で、自分の用事もついでに済ませようと欲張って、母への配慮が疎かになったりする。

そんな母と、父は毎日一緒にいる。あの頃「許せない」とまで思った父に、いまは頭が下がる。

疑われていた時期は、永遠に続くように感じた。体重が減るほど傷ついた。でも、あの時期は、続かなかった。

いま「盗った」と疑われて傷ついている人に、もう一度だけ書いておく。あなたが疑われるのは、あなたが一番近くにいるから。そして、その時期は、たぶんずっとは続かない。

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