認知症の母は、ものを隠す。財布、鍵、現金、貴金属……大切なものほど、どこかへ消えてしまう。必死で探す父の姿を見ながら、これは「宝探し」だな、とある日ふと思った。
同じ話が、ぐるぐると繰り返される
母は、アルツハイマー型認知症だ。
短期的記憶が難しい。
私が会いに行く1時間も無いくらいの間でも、同じ話がぐるぐるとしている。
娘が今、どこにいて何をしているか、いつも聞かれるけれど。
5回言っても、10回言っても、同じ事を質問される。
私は、ほんの少しの時間しか母とは居ないので、同じ話をすること位はどうってことはない。
父はイライラしていない。でも母はそう思ってしまう
しかし、父との間ではそうは行かない。
父はそんなつもりは無いが、母は、父が母の事を面倒に思ったり、イライラしている。と思ってしまう時があり、実際は違うのだが。
ひとりで思い込んで、落ち込んで、イライラして、攻撃的な態度を取ってしまう。
父を困らせたくて、物を隠す
母は、お父さんを困らせたいと、物を隠す。
財布や、鍵、現金、貴金属、いろんなところに隠し、自分でもわからなくなってしまう。
今すぐに必要なければ、あまり困らないが、すぐ必要なお財布とか…。父が必死に探していたりする。
「私が死んだら、探してね」
母は、「私が死んだら、探してね。たくさん隠してるから」と機嫌が良い時に笑いながら言う。
宝探しみたいだ。
その言葉を聞いたとき、なんだか笑えてきた。困らせようとしているのに、どこか憎めない。母なりの愛情表現なのかもしれないし、ただの意地悪なのかもしれない。でも、母が笑いながら言うその言葉には、まだ生きている母がいる。
もし本当に母が逝ってしまったら、父と一緒に家中を探すことになるんだろう。それはきっと、泣きながら笑う、不思議な宝探しになると思う。
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