「訪問介護を頼めば、家のことをいろいろ助けてもらえる」——最初、私はそう思っていた。
でも調べてみると、訪問介護(ヘルパーさん)には時間の決まりと、できること・できないことの線引きが、けっこうはっきりある。知らずに頼むと、「え、それはできないの?」とすれ違うことになる。
だから、頼む前に知っておきたい基本を、やさしくまとめておく。
訪問介護には「3つの種類」がある
訪問介護は、大きく3つに分かれる。
- 身体介護:本人の体に直接ふれる介助(入浴・食事・排泄など)
- 生活援助:本人の身の回りの家事(掃除・洗濯・調理・買い物など)
- 通院等の乗降介助:通院時の車の乗り降りの手伝い
いちばん「家のことを頼みたい」と思うのは生活援助だと思う。でも、この生活援助に、時間と範囲の壁がある。
時間は「45分」が基本
意外と知られていないけれど、生活援助の時間は、「20分以上45分未満」か「45分以上」という区分で動いている。そして、1回の訪問で頼めるのは、基本的にひとつの家事だ。
たとえば「買い物をお願いしたい」と頼んだとする。実際の流れはこうだ。
到着 → 何を買うか確認 → お店まで行く → 買い出し → 帰ってくる → 報告 → 買ったものをしまう。
——これで45分は、あっという間。むしろ足りないくらいだ。「ついでに掃除も」とは、なかなかいかない。
生活援助で「できること」
ヘルパーさんに頼める家事は、こんな範囲。
- 調理:ふだんの食事づくり、配膳、片付け
- 洗濯:洗濯機・手洗い、干す・取り込む・しまう、アイロンがけ
- 掃除:本人が使う部屋・トイレの掃除、ゴミ出し
- 買い物:生活圏内での日用品・食料品の買い物代行、薬の受け取り
- その他:ベッドメイキング、衣類の衣替え、ボタン付けなどの補修、換気・室温の調整
生活援助で「できないこと」(ここが意外と多い)
一方で、「え、これもダメなの?」というものも、けっこうある。
- 本人以外のための家事:家族の分の食事づくり・洗濯、来客へのお茶出し
- 日常を超える作業:大掃除、換気扇やベランダの掃除、庭の草むしり・水やり
- ペットの世話、洗車
- 行事のための調理(おせちなど)、生活圏の外への買い物、お酒やお菓子などの嗜好品の買い物
- 模様替え、引っ越しの荷造り
- 「話し相手だけ」の利用
大事な原則は、「本人ができることは対象外」「ヘルパーは家事代行サービスではない」ということ。あくまで、介護保険の中で「本人の生活に必要な支援」をする仕組みなのだ。
身体介護で「できること」
体にふれる介助は、こんな範囲。
入浴介助、排泄介助、食事介助、着替えの手伝い、移動・移乗の介助、起床・就寝の介助、口腔ケア、通院の同行、服薬の介助、健康チェックなど。
ただし、医療行為はできない。血糖値の測定、床ずれの処置、摘便、インスリン注射、たんの吸引、経管栄養など、専門的な判断が必要なものは、ヘルパーさんの範囲外。これらは訪問看護(看護師さん)に頼むことになる。
「これは頼めない」の壁にぶつかったら
こうして見ると、訪問介護は心強い一方で、「うちが本当に手伝ってほしいこと」が、範囲の外にあることも多い。
- 家族の分もまとめて家事を頼みたい
- 生活圏の外の病院に付き添ってほしい
- 夕方の大変な時間に、ただそばにいてほしい
- 草むしりや大掃除も頼みたい
とくに切ないのが、「話し相手」や「そばで見守ること」が頼めないことだと思う。認知症の初期——本人はまだ元気で、感情も強くて、いちばん“誰かにそばにいてほしい”時期に、この“お相手”だけは、保険の対象にならない。家族が付きっきりになって、いちばん疲れるのも、実はこの時期だったりする。もし、母のお相手をしてくれる人がいたら、その間に家事も進むし、家族もひと息つける。要介護度が低いうちほど、この“見えない大変さ”は制度に届きにくい。
——こういう「介護保険では頼めないすきま」は、介護保険外のサービスで埋めるという方法がある。全額自己負担にはなるけれど、うちの都合に合わせて柔軟に頼める。
(→ 介護保険外サービスとは?費用と使いどころ——「すきま」に倒れそうな家族へ)
どこに相談すればいい?
「訪問介護を使ってみたい」と思ったら、まずは担当のケアマネジャーに相談を。ケアプランに沿って、使えるサービスを一緒に組んでくれる。
まだ介護認定を受けていない・ケアマネがいないという場合は、地域包括支援センター(市区町村の窓口)が入り口になる。
よくある質問(訪問介護)
Q. 訪問介護は、何分から頼めますか?
A. 生活援助は「20分以上45分未満」「45分以上」が基本の区分です。1回の訪問で頼める家事は、基本的にひとつと考えておくと安心です。
Q. 家族の分の食事も、一緒に作ってもらえますか?
A. できません。生活援助は「本人のための家事」に限られます。家族の分は対象外です。
Q. 草むしりやペットの世話は?
A. どちらも訪問介護の範囲外です。日常の家事を超える作業や、本人以外のための作業は頼めません。
Q. 医療的なケアが必要なときは?
A. たんの吸引や床ずれの処置などは、ヘルパーではなく訪問看護(看護師)の担当になります。ケアマネに相談してみてください。
最後に
訪問介護は、使い方がわかると、とても心強い味方になる。
でも、「なんでも頼める便利屋さん」ではない。時間の決まりも、できることの線引きもある。そこを知っておくだけで、「頼んだのに違った」というすれ違いが、ぐっと減ると思う。
そして、範囲の外にある「すきま」は、別の方法で埋められる。まずはケアマネさんに、「うちはこれで困っている」と話してみるところから。ひとりで抱えなくていい。
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