「介護、できる?」と詰められたら、私はなんと答えるだろう。
たぶん「無理」と言ってしまうと思う。でもそれを口に出す勇気が、今の私にはない。
知り合いのAさんの娘は、言い切った。
看護師にもケースワーカーにも「本来あなたが見るべきです」と言われた。それでも「無理です」と言い切った。
ケアマネがスピード感を持って動いた。あっという間に特養の入所が決まった。
今、Aさんは施設で娘が面会に来るたびにこう言うそうだ。
「高級な老人ホームに入れてくれてありがとう。」
何度も、何度も。
Aさんの娘は冷たいのだろうか。ひどい娘なのだろうか。
私はそう思わない。
たぶん、私と同じだ。できないのではなく、できない理由がある。介護を選べば、何かを犠牲にする。子どものこと、自分のこと、仕事のこと。
それを「嫌だ」と思うことは、冷たいことじゃない。
それは冷たさじゃなくて、自分の限界を正直に認めた勇気だと思う。
でも「冷たいのかな」と思ってしまう。たぶん、愛しているから。
父のことが、こわい
母の認知症が進むにつれて、私が心配しているのは母だけじゃなくなっていた。
父のことが、こわい。
毎日そばにいる。怒鳴られても、振り回されても、「なるようになる」と笑う。
その笑顔が、私にはこわかった。
介護している側が先に限界を迎えることは、珍しくない。配偶者が認知症になったとき、もう一方が主な介護者になるケースは多い。でもその人も、年をとっている。疲れる。傷つく。倒れる。
父には父の人生がある。楽しいことをして、好きなことをして、穏やかに過ごしてほしい。
だから私は、特養への申請を勧めた。
「申請だけしよう」という言葉
父は動かなかった。
「なるようになる」
その言葉を聞くたびに焦った。でも、説得するときに使える言葉をひとつ知っている。
「申請=すぐ入居じゃないよ。10年待ちになるかもしれない。だからこそ今動かないと、いざというとき選択肢がなくなる」
申請しておくだけでいい。入居するかどうかは、そのとき決めればいい。動かなければ、選べなくなる。それだけを伝えた。
要介護1でも、申請できる
母は今、要介護1だ。
特養への入所は、原則要介護3以上。正直に言うと、今すぐ入れるわけじゃない。
でも申請はできる。待機リストに入ることはできる。
そして、こういった事情があれば特例として考慮されることがある。
- 認知症の症状があり、在宅生活が難しい
- 家族の介護力に限界がある
- 本人の攻撃性など、在宅での対応が困難
大事なのは、ケアマネさんに全部正直に話すこと。家族の疲弊、限界、本人の状態。包み隠さず伝える。申請書類の書き方で、審査の結果が変わることがある。
特養に入ったあと、病気になったら
気になっていたことがある。
特養に入ったとして、もし病気になったら?入院が長引いたら?
正直に書く。
特養は「生活の場」であって「医療の場」ではない。入院が長引くと、退居を求められることがある施設もある。気管切開や胃ろうなど、医療的な処置が必要になった場合は対応できないことも多い。
だから私は看取りに対応している特養を選ぶことを考えている。
看取り対応の特養なら、最期まで施設で過ごせる。積極的な延命はしないけれど、穏やかにその人らしく最期を迎えられる。環境が変わることが混乱を招きやすい認知症の方には、むしろその方が合っていると思っている。
最後に
Aさんは今日も、面会に来た娘にこう言うそうだ。
「高級な老人ホームに入れてくれてありがとう。」
言い切ることが、親を守ることになった。
私はまだ言い切れていない。でも、申請だけは一緒にしようと思っている。
施設選びで迷ったときは、イチロウに相談してみてほしい。無料で地域の施設情報を教えてもらえる。私も参考にしている。

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