うちは今、特養に申し込むまでの期間なのかもしれない。最近、そう思うようになった。
父は「できるだけ自分が」と思っている。母の身の回りのことを、できる限り自分の手でやりたいという気持ちがあるのだと思う。その気持ちはよくわかる。でも、しもの世話まで、本当にできるのだろうか。
私にはひとつ、忘れられない記憶がある。同居していた祖父が認知症になったとき、便をトイレや廊下の壁になすりつけてしまうことがあった。それを拭いていたのは、当時の母と、まだ子どもだった弟だった。祖父はそのあと体調を崩し、わりと早くに入院という区切りがついた。
でも、今の母は74歳。毎日2時間歩いて、足腰もしっかりしている。認知症の症状は進んでいっても、体はこの先何年も元気なままかもしれない。祖父のときとは、たぶん違う長さの話になる。父の「できるだけ自分が」が、どれくらい続くのか、今は誰にもわからない。
そのことに気づいたとき思ったのは、「特養に申し込んだら、あとは待つだけ」ではないということだった。申し込んでから実際に入所するまでには、多くの場合、時間がかかる。その「空白の期間」を、家族はどう過ごせばいいのか——調べてわかったことを、ここに残しておく。
特養の順番待ちは、どれくらいかかる?
特養の入所までの期間は、地域や施設、そのときの空き状況によって大きく違う。数か月で入れることもあれば、1年以上待つこともあると言われている。はっきりした目安を出すのは難しいので、正確な見通しは、申し込み先の施設やケアマネジャーに直接確認するのが確実だ。
ただ、ひとつ知っておいてよかったのは、特養の入所は「申し込んだ順」ではないということ。要介護度や介護者の状況、在宅での困難さなどを点数化して、必要性の高い人から決まっていく仕組みになっている(詳しくは要介護1でも特養は申請できる——「うちには無理」と諦める前に、私が調べたことにまとめた)。だから、「申し込んだから、あとは順番が来るのを待つだけ」と思っていると、実際の状況とズレることがある。
それだけでなく、施設側にも「今、受け入れやすい人」という事情があるらしい。すでに動き回る人が多い施設だと、スタッフの手がそれ以上かかる人は入りにくかったり、今いる入居者とのバランスで性別が偏らないようにしたりと、点数だけでは測れない部分もあるようだ。つまり、順番も条件も、こちらでコントロールしきれない要素が多い。
だからこそ、待っている間にも、状況は動く。その間どう過ごすかを、あらかじめ考えておく意味がある。
待つ間、家族にできること
①在宅を続けながら、使えるサービスをフル活用する
いちばん現実的なのは、デイサービスやショートステイを、今よりもう少し頼ることだと思う。「まだ大丈夫」と思っているうちは、遠慮してしまいがちだけど、待機期間は「今のペースを保つための期間」でもある。無理を重ねてしまうと、家族のほうが先に倒れかねない。
介護保険の訪問サービスには、45分という時間の壁があったり、家族の分の家事や話し相手は頼めなかったりと、できないことも意外と多い(介護保険外サービスとは?費用と使いどころ、訪問介護とは?時間・できること・できないことに詳しくまとめた)。保険の範囲で足りない部分は、保険外サービスで埋めるという選択肢もある。
②民間の施設も、並行して見ておく
特養だけにしぼらず、有料老人ホームなど民間の施設も並行して調べておくと、選択肢が増える。うちは、有料老人ホームに何百万という入居金を払う余裕はない。それでも、「どんな施設があるのか」「費用感はどれくらいか」を知っておくだけで、いざというときの心の余裕が違う気がしている。
📋 特養を待つあいだ、民間の施設も見ておくなら
無料の一括資料請求サービスを使うと、地域・予算・受け入れ条件を選ぶだけで、複数の施設パンフレットをまとめて取り寄せられる。「今すぐ決める」ためではなく、「知っておく」ために使うのでも十分だと思う。
笑顔で暮らせる住まいがきっと見つかる【いい介護】③「ひとりで背負わない」を、家族のルールにしておく
祖父のときのように、家族だけで抱え込んでしまうと、いつか限界が来る。誰か一人が「自分が頑張らなきゃ」と思い込む前に、プロの手を借りることを、家族の中で当たり前にしておきたい。それは、家族の負けでも、愛情が足りないことでもないと思う。
これには理由がある。待機期間そのものがつらすぎると、その疲れは入所したあとにも続いてしまうらしい。面会に行く、必要なものを届ける——そうした関わりが難しくなったり、預けたことでほっとする以上に「もう関わりたくない」という気持ちが出てきてしまうこともあると聞いた。だとすれば、待っている間にどれだけ自分を守れるかは、その先の家族の時間にもつながっているのだと思う。
「決める」のは、まだ先でいい
いろいろ調べてみて、最後に思ったのはこれだった。今すぐ答えを出さなくていい。特養に申し込んだからといって、それがすべてでもない。ただ、待っている間に何ができるかを知っておくだけで、いざというときに慌てずにすむ。
高齢化していく社会の中で、家族が自分の人生も大事にしながら介護をしていくには、プロの力を、もっと気軽に借りられる仕組みが必要なんだと思う。うちも、まだ答えは出ていない。それでも、選択肢を知っておくことが、今できる精一杯なのかもしれない。

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