要介護1でも特養は申請できる——「うちには無理」と諦める前に、私が調べたこと

介護の知識

先日、母が自分から「施設に入りたい」「家族よりプロにお願いしたい」と口にした。認知症の母が、自分の意思でそう言ったことに、私は驚いた。でも、その後に具体的な話をすると「そんなこと言ってない」と不機嫌になる。覚えていないのだ。

それでも、私は調べはじめた。母の言葉が本心であろうとなかろうと、いつかは考えなくてはいけないことだったから。そして調べるうちに、自分が「どうせうちには無理だろう」と思い込んでいたことの多くが、思い込みだったと気づいた。同じように立ち止まっている人のために、調べたことを残しておきたい。

そもそも、要介護1で特養に申請できるの?

特別養護老人ホーム(特養)は、原則「要介護3〜5」の人が対象だ。母は要介護1。だから私は、最初から「うちは対象外だ」と思っていた。

でも、調べてわかった。要介護1や2でも、「特例入所」という仕組みで申請できる場合がある。これは、家で生活を続けるのが難しい「やむを得ない事情」がある人のための制度だ。たとえば、認知症で症状が重く在宅生活が難しい、家族からの虐待のおそれがある、介護する家族が高齢や病気で支えきれない——そういった事情が認められれば、要介護1でも申請の対象になる。

うちの場合、母には認知症の強い興奮や攻撃的な言動があり、介護する父も高齢だ。これは、まさに「やむを得ない事情」に当てはまるかもしれない、と思った。

父が動かなくても、申請できる

私がいちばん引っかかっていたのは、これだった。介護の中心は父で、その父が「今のままでいい」と動かない。父が申請しないと、何も始まらないんじゃないか、と。

でも、そうではなかった。特養の申請は、本人や配偶者だけでなく、子どもなどの家族が手続きを進めることができる。申込書を書くのも、施設や役所とやり取りするのも、家族でいい。父が主導しなくても、私が動けば、申請は前に進められる。これは、私にとって大きな発見だった。

有料老人ホームは無理。でも特養なら

うちは、いわゆる富裕層ではない。それなりに生活はできているけれど、有料老人ホームに何百万、何千万という入居金を払う余裕はない。だから「施設なんて、うちには関係ない」と思っていた。

でも、特養は有料老人ホームとちがって、入居一時金がいらない。かかるのは月々の費用だけだ。相場は月8万〜15万円ほどで、内訳は介護サービス費・居住費・食費など。さらに、世帯が住民税非課税で預貯金が一定以下なら、「負担限度額認定」という制度で居住費と食費が大きく軽くなる。

うちはこの軽減の対象にはならないかもしれない。それでも、入居金が不要で、月額だけで済むというのは、有料老人ホームとは比べものにならないくらい現実的だった。具体的にいくらになるかは世帯ごとに違うので、ここはケアマネジャーや役所の窓口で、実際の数字を出してもらうのが確実だ。

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「すぐ入れる人」と「何年も待つ人」のちがい

特養は「順番待ちが長い」と聞く。実際、何年も待つ人がいる一方で、わりと早く入れる人もいる。この差は何なのか。

調べてわかったのは、特養の入所は「申し込んだ順」ではない、ということ。多くの自治体では、要介護度・介護者の状況・在宅生活の困難さなどを点数化して、必要性や緊急性の高い人から入所が決まる。だから、申し込みが遅くても、状況が切迫していれば順番が上がることもある。

母の場合、攻撃的な言動や、介護する家族の負担の大きさは、点数として評価される要素にあたる。「要介護1だから後回し」と単純に決まるわけではないのだと知って、少し気持ちが軽くなった。

いちばんむずかしいのは、本人の気持ち

制度のことは、調べればわかった。でも、いちばんむずかしいのは、そこじゃない。

母は「入りたい」と言っても、すぐに忘れる。本心だと思っても、次の瞬間には「そんなこと言ってない」になる。そして、もし申請を進めれば、きっとこう言うだろう。「お父さんを楽させるだけ」「ずるい」「あんたが入れば」。父はそれを毎日言われるのが怖くて、結局「今のままやり過ごすほうがいい」と思ってしまう。これでは、何も進まない。

調べていて知ったのは、認知症の人の意思が揺れるのは、ごく当たり前だということ。だからこそ、申請を本人ひとりの「今の気持ち」に委ねるのではなく、家族とケアマネジャーが一緒に、本人にとって何が必要かを考えて進めていい。本人が忘れてしまうことを、家族が責任を持って前に進める——それは、見捨てることじゃない。

それでも、調べてよかった

正直、まだ何も解決していない。母の気持ちは揺れるし、父は動かないし、申請が実際に進むかもわからない。

でも、「要介護1でも申請できる」「父が動かなくても家族が進められる」「特養なら費用も現実的」——この3つを知れただけで、出口のない箱の中にいた気持ちが、少しだけ変わった。同じように「どうせうちには無理」と思って立ち止まっている人がいたら、まずは地域包括支援センターか、担当のケアマネジャーに聞いてみてほしい。私も、これから相談するところだ。

一人で抱えこまないために

特養の申請も、日々の介護も、家族だけで抱えるには重すぎることがある。要介護1・2の特例入所の判断や、費用の見積もり、申請の進め方は、ケアマネジャーや地域包括支援センターが一緒に考えてくれる。まずは相談することから始めたい。

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