認知症の親が、財布やお金を隠すようになった——。探しても見つからず、「盗った」と責められ、こちらが疲れ果てる。介護をしていると、この「お金やものが消える」問題に何度もぶつかります。
我が家でも、母が認知症と診断されてから同じことが続きました。この記事では、当事者として調べ・試してきたことをもとに、「なぜ隠すのか」「どう対応すればいいのか」「トラブルを減らす方法」を実用的にまとめます。
なぜ認知症の親はお金やものを隠すのか
隠すのは、意地悪でも嫌がらせでもありません。理由は主に2つです。ひとつは記憶の問題。認知症が進むと「しまった」という行動は残っても「どこにしまったか」が抜け落ち、本人は本気で「ない」と思い、ときに「盗られた」と感じます(物盗られ妄想)。もうひとつは不安。「大切なものを守りたい」気持ちは最後まで残り、隠すのはその表れです。悪意ではなく必死さだと考えると、見方が少し変わります。
よくあるパターン(あなたの家でも?)
- 財布やお金が「消える」→大騒ぎになる
- 「誰かが盗った」と家族を疑う
- 隠した本人が忘れて、本気で一緒に探す
- 探していると逆に責められる・怒り出す
- 「隠す→見つける→また隠す」を繰り返す
どれも認知症の「物隠し」ではよくあること。「うちだけではない」と知るだけでも、少し楽になります。
認知症の人はお金をどこに隠す?よくある隠し場所
「どこを探せばいいの?」と途方に暮れたとき、参考になるよう、よくある隠し場所をまとめます。本人を問い詰めるためではなく、落ち着いて一緒に探すためのヒントとして使ってください。
| 場所 | よくある隠し場所 |
|---|---|
| 寝室 | 布団・マットレスの下、枕カバーや座布団の中、タンス・引き出しの奥 |
| リビング | 本やノートの間、新聞・チラシにはさむ、ティッシュ箱・空き箱の中 |
| キッチン・水回り | 冷蔵庫、食品ストックの棚(パントリー)、お菓子の缶や食品の容器の中 |
| 衣類・バッグ | 上着やズボンのポケット、服と服の間、あらゆるバッグの中(普段使いの小さなバッグからブランドバッグ、手作りの布バッグまで) |
| 意外な場所 | 家具の下やすき間、自転車の充電器などをしまうケースの中、仏壇・神棚まわり、押し入れの奥、あまり使わない部屋 |
我が家の場合、母のお金やものは、意外なところから出てきました。自転車の充電器をしまうケースの中、長年持ち歩いている小さなバッグから、ブランドバッグ、手作りの布バッグまで——ありとあらゆるバッグの中。お札が、財布にも入れられず、家具のすき間にそのまま置かれていたこともありました。正直、「隠した」のか「たまたま置いた」のか、本人にももう分からないのだと思います。だからこそ、責めても意味がない。
ポイントは、同じ場所に隠すクセがあることが多いということ。一度見つかった場所は、次もそこにある可能性が高いので、まずは「過去に見つかった場所」から確認すると早いです。そして見つけたときは、できれば本人が見つけた形にすると、プライドが守られ、落ち着きやすくなります。
やってはいけない対応・うまくいく対応
避けたい対応:正論で言い返す/「さっき自分でしまったでしょ」と記憶を責める/一緒に必死で探してこちらも感情的になる。
うまくいきやすい対応:否定せず気持ちに寄り添う(「無くなって不安だよね」)/「いっしょに探そうね」と味方の姿勢を見せる/お茶や好きな話題へそらす/落ち着いてからさりげなく探す。
ポイントは「事実の訂正」より「安心の提供」。正しさより、落ち着くことを優先します。
「盗られた」と疑われたら——物盗られ妄想への対応
「財布を盗られた」「お金がなくなった、あなたが取ったでしょう」——身近で支える家族ほど疑われやすいのが、認知症の「物盗られ妄想」です。本人にとっては本当に盗られたと感じているので、否定や説得は逆効果になりがちです。まずは「なくなって不安だよね」と気持ちに寄り添い、「いっしょに探そう」と味方になることが、いちばん落ち着く対応です。見つけたときも、できれば本人が見つけた形にすると、プライドが守られます。疑われても、あなたが信頼されていないわけではありません。むしろ“いちばん安心できる相手”だからこそ、不安をぶつけてしまうのです。
「なぜ盗られたと思い込むのか」「なぜ何度も同じ話をするのか」——その仕組みを知ると、家族の受け止め方が少し変わります。うちで実際にあった財布の一件と、物盗られ妄想・保続(ほぞく)の仕組みを、別記事にまとめました。
👉 認知症の親が何度も同じ話をするのはなぜ?——「財布がない」の裏にある仕組みと、家族が楽になる考え方
お金のトラブルを減らす「仕組み」
- 手元に置く現金は最小限にする
- 通帳・印鑑・カード・大切な物は家族が管理する
- 隠し場所のクセを把握しておく(同じ場所が多い)
- 少額の「予備の財布」を用意して本人の安心感を保つ
管理が難しくなってきたら——制度・サービスという選択肢
- 日常生活自立支援事業(社会福祉協議会):通帳預かりや日常のお金管理を支援
- 成年後見制度:判断能力が不十分な人の財産を法的に守る制度
- 家族信託:元気なうちに財産管理を家族へ託しておく仕組み
どれも一長一短があり、家庭の状況で向き不向きが分かれます。迷ったら、地域包括支援センターや専門家へ相談を。成年後見を検討した体験は「成年後見制度を調べて、やめた。」にまとめています。
よくある質問(認知症・お金を隠す/物盗られ妄想)
Q. 認知症の人は、お金をどこに隠しがちですか?
A. タンスや引き出しの奥、布団の下、本の間、仏壇まわり、冷蔵庫や空き箱の中などが多く見られます。同じ場所に隠すクセがあることが多いので、過去に見つかった場所から確認するのが近道です。見つけたときは、本人が見つけた形にすると落ち着きやすくなります。
Q. 「お金を盗られた」と疑われたら、どう対応すればいい?
A. 否定や反論はせず、まず「不安だよね」と気持ちを受け止めます。「いっしょに探そう」と味方の姿勢を見せると落ち着きやすいです。事実の訂正より、安心を与えることが先です。
Q. 物盗られ妄想は治りますか?いつ落ち着きますか?
A. 個人差がありますが、環境の調整や薬、症状の進行とともに和らぐことがあります。我が家でも、数か月で落ち着いた時期がありました。強く続いてつらいときは、主治医やもの忘れ外来に相談しましょう。
Q. 通帳やお金は、どこまで家族が管理していい?
A. 本人の安心のために少額の現金は手元に残しつつ、通帳・印鑑・カードなど大切なものは家族が管理するのが基本です。トラブルが続くなら、制度(成年後見・家族信託など)も検討しましょう。
Q. 隠したお金が見つからないときは?
A. 同じ場所に隠すクセがあることが多いので、過去に見つかった場所を確認します。大きな金額が動いてしまう場合は、早めに財産管理の仕組みを整えると安心です。
Q. お金の管理が難しくなったら、どこに相談すればいい?
A. まずは地域包括支援センターやケアマネジャーへ。日常生活自立支援事業(社会福祉協議会)、成年後見制度、家族信託など、状況に合う方法を一緒に考えてもらえます。
まとめ
認知症の「お金を隠す」は、記憶と不安からくる症状で、どの家でも起こりえます。正論で訂正するより、安心を与える対応が効きます。そして、現金を最小限にする・家族が管理する・必要なら制度を使う、という仕組みづくりが消耗を減らします。ひとりで抱え込まないでください。まずは地域包括支援センターやケアマネジャーに相談を。
探し物や「盗られた」への対応が続くと、家族は本当に消耗します。数時間だけ介護を代わってもらえる保険外の訪問サービスに頼って、休む時間をつくるのも大切な仕組みづくりのひとつです。
📋 ひとりで抱え込む前に
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あわせて読みたい:母がお金を隠す本当の理由 / 成年後見制度を調べて、やめた。
母のお金をどう守るかは、「隠す」への対応のその先にある悩みです。うちが成年後見をやめたあとに調べた仕組みのことも、まとめておきました。


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