インフルエンザでも休めなかった日——子育てと介護を抱えながら、限界まで動いていた話

母のこと

熱があった。でも、その日は遠足だった。

幼稚園の仕事で、子どもたちを引率する立場だった。しかも私は、加配のお子さんの担当だ。自分が休んだら、代わりがいない。そう思って、ロキソニンを飲んで出かけた。

マスクをして、手袋をして。子どもたちにうつすわけにはいかなかった。

担当の子の手を握って、一緒に歩いた。ふらふらしながら、でも気づかれないように。


途中で急な大雨が降った。屋根のあるベンチで雨宿りになった。

担当の子がおやつを食べているのを、ぼんやり見ていた。座っていられる。ただ雨が止むのを待つだけでいい。具合の悪い私には、その時間がありがたかった。

そのとき、担任の先生が近づいてきた。「なんか元気ないけど、大丈夫?」

「ちょっと体調不良で」と、軽く言えた。それだけで、少し楽になった気がした。


家に帰って、倒れるように寝た。

数日後、娘が同じ症状を訴えた。病院に連れて行ったら、インフルエンザだった。うつしてしまった。自分が無理をしたせいで、と思った。


あの頃、「休む」という選択肢が自分の中になかった。

仕事を休めば収入が減る。職場に迷惑をかけたくない。子どもたちのことも、自分でやらなければ。

そして、離れて暮らす母のこと。

ちょうどその頃、母の攻撃性がひどく出ていた時期だった。セカンドオピニオンを受ける前で、まだ対応の糸口が見えていなかった。父は疲れ切っていた。電話口の父の声が、いつもより重かった。

自分が倒れている場合じゃない、と思っていた。


今ならわかる。あのとき私は、限界をとっくに超えていた。でも限界に気づく余裕すら、なかった。

介護をしながら、子育てをしながら、仕事をしている人に聞きたい。「自分が倒れるわけにはいかない」と、無理を重ねていないだろうか。

休めない状況は、誰かのせいじゃない。でも、誰かに言えたら少し楽になるかもしれない。

担任の先生の「大丈夫?」という一言が、あの日の私にはそうだったように。

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