実家には、保護犬が2匹いる。
母が認知症にならなければ、両親は自分たちの家で、犬たちと暮らしていくはずだった。それ以外の選択肢なんて、考えたこともなかったと思う。
でも今、毎日いちばん近くで母を支えている父の大変さを見ていると、思ってしまう。
ほかに、方法はないのかな、と。
施設に「入れたい」わけではない。いざというときに何を選べるのか、知っておきたいのだ。
そして、うちの場合、そこで必ずぶつかる問題がある。
犬たちは、どうなるの?
犬たちは、両親の暮らしの支えだ
母にとって、犬の散歩は毎日の外出の習慣だ。犬がいるから「行こう」と思える。散歩には、父も一緒に行く。
父は、私たちにはなかなか本音を見せない。でも犬がすり寄ってくると、子どもにも見せたことのない顔になる。
この2匹がどれだけ両親を支えてくれているかは、認知症の親とペットの暮らし——保護犬2匹がくれるものに書いた。
だから、「犬と離れる」は、簡単には選べない。
特養には、犬は連れていけない
父には、要介護1のうちから特養(特別養護老人ホーム)の申請もすすめている。そのことは父が倒れる前に動きたい。要介護1でも、特養の申請をすすめた理由に書いた。
でも、特養は相部屋が中心で、ペットと一緒に暮らすことは基本的にできない。特養を選ぶなら、犬たちとは離れることになる。
私たち子どもは、特養の申請を進めている。
でも父は、できるところまで自分でみる、と思っている。父にとって施設は、まだまだ先のこと。もしかしたら、自分が死んだあとのこと、くらいに思っているのかもしれない。
それなら、犬と一緒に入れるところは、ないのだろうか。
弟が探してみたら「意外とない」
弟が、ネットで探してみたらしい。
「意外とない」と言っていた。
「近くにもあるけど、空いてないよね」とも。
私も調べてみた。本当に、少なかった。
民間の施設を探せる「いい介護」で、東京都の施設を「ペット可」で絞り込むと、59件。神奈川県では、LIFULL介護の検索で91件だった(どちらも2026年10月時点)。東京都だけで老人ホームやサ高住は数えきれないほどあるのに、ペットと入れるのは、ほんのひとにぎりだ。
「ペット可」でも、条件がある
しかも、「ペット可」と書いてあれば、どんな犬でも入れるわけではない。施設を紹介する会社の解説を読むと、よくある条件はこんな感じだった。
- 小型犬(体重10kg以下くらい)や猫が中心
- 1頭までのところが多い
- 本人が自分で世話をできることが前提のことが多い
- 共用の場所では抱っこやキャリーで移動する、などのルールがある
うちの犬は、2匹。チワワは小型犬だけれど、コッカープーは大きさによっては条件ぎりぎりかもしれない。
東京都で「2頭まで可」とはっきり書いている施設は、私が探した範囲では見つからなかった。「相談可」となっているところはある。2匹で入れるかどうかは、施設に直接聞いてみるしかなさそうだ。
それに、認知症の母が、自分で犬の世話をできるかというと、正直むずかしい。ペット可の施設に入れても、世話をするのは誰か、という問題は残る。
(出典:笑がおで介護紹介センター「ペットと暮らせる老人ホーム・介護施設」)
費用はどれくらい?
「うちには無理かな」——50代のころの見学
実は、両親は昔、老人ホームを見学したことがある。
母がまだ元気だったころ。たしか、ふたりとも50代だった。近所に老人ホームができて、二人で見に行ったらしい。
高くて、驚いたそうだ。
「うちには無理かな〜」と言っていた。
あのころは、まだずっと先の話だった。でも今は、もう先の話ではなくなった。
多摩地域のペット可の施設(例)
東京都の多摩地域で、ペット可の施設をいくつか見てみた。
| 施設名 | 市 | 種類 | 入居時 | 月額 |
|---|---|---|---|---|
| 緑山グランドハイツ | 町田市 | 介護付き有料老人ホーム | 0〜1,600万円 | 22.2〜35.2万円 |
| リリィパワーズレジデンスまちだ森野 | 町田市 | サービス付き高齢者向け住宅 | 19.5〜39.5万円 | 19.8〜39.2万円 |
| グランマリバーサイド立川 | 立川市 | サービス付き高齢者向け住宅 | 10.0万円 | 16.1〜23.9万円 |
| リリィパワーズレジデンス武蔵野 | 西東京市 | サービス付き高齢者向け住宅 | 17.9〜20.5万円 | 19.3〜20.6万円 |
| グランジュール吉祥寺南 | 三鷹市 | サービス付き高齢者向け住宅 | 23.8〜40.4万円 | 16.7〜26.6万円 |
表に何度も出てくる「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)は、国の制度で決められた、高齢者向けのバリアフリーの賃貸住宅だ。ケアの専門家による安否確認と生活相談がついている。契約はアパートを借りるのと同じ賃貸借契約なので、入るときのお金が比較的少ないところが多い。
(出典:国土交通省・厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム 制度について」)
月額はだいたい16万〜40万円くらい。入居するときのお金は、ほとんどかからないところから、何百万円もかかるところまでさまざまだった。
ここに、ペットの分の費用がのってくることがある。月に数千円〜1万円くらいの「ペット管理費」がかかったり、入居するときのお金が上乗せされたりする施設もあるそうだ。犬のごはん代や病院代も、もちろん別にかかる。
ひとりの場合、夫婦の場合
母ひとりなら、ひとり分。両親ふたりで入るなら、ふたり分。当たり前だけれど、ふたりだとぐんと高くなる。
施設によっては「夫婦部屋」「二人部屋」がある。施設を紹介するサイトでは、夫婦部屋ひとつのほうが、個室をふたつ借りるより安くなる例も紹介されていた。ただ、夫婦部屋があって、しかもペット可、という施設になると、さらに数は限られる。
全員一緒か、全員バラバラか、だけじゃない
身近でも、「老人ホームに入る親戚から、犬を引き取った」という話をよく聞く。施設に入るとき、犬を誰かに託すのは、めずらしいことではないのだと思う。
調べているうちに、選び方はひとつじゃない、と思うようになった。
- 母だけが施設に入って、父は家で犬たちと暮らす
- 1匹だけ母と一緒に施設へ行き、もう1匹は父と家に残る
- ふたりと2匹で、そろって入れるところを探す
母だけ施設に入るか、ふたりで入るか
いちばん大きな分かれ道は、ここだと思う。わかる範囲で、比べてみた。
| 母だけ施設、父は家で犬と | 父と母が一緒に入る | |
|---|---|---|
| 費用 | ひとり分+家での暮らしの費用 | ふたり分(夫婦部屋があれば少しおさえられることも) |
| 犬 | 父と家で暮らせる | ペット可で、しかも2匹で入れる施設を探す必要がある |
| 父の暮らし | 介護からは少し離れられる。でも家でひとりになる | 母のそばにいられる。生活は施設の決まりに合わせる |
| 選べる施設 | 母に合うところを選べばいい(選択肢が広い) | 要支援1の父も入れる施設に限られる |
| 気になること | 父がひとりになる。面会に通う負担 | 選べる施設が、さらに少なくなる |
父は今、要支援1だ。施設には「入居するときの条件」があって、「要介護の人だけ」のところもある。ふたりで入るなら、要支援の父も一緒に入れるかどうかを、まず確かめる必要がある。
どちらがいいかは、まだわからない。でも、「全員一緒か、全員バラバラか」の二択だと思っていたときより、少し気持ちが楽になった。
入ったら、ご飯・掃除・洗濯はどうなる?
父の大変さを減らしたい。そう考えると、いちばん知りたいのはここだった。施設に入ったら、毎日のご飯や掃除、洗濯、母の介護は、誰がするのか。
これも、施設の種類によってちがう。
| 介護付き有料老人ホーム | 住宅型有料老人ホーム | サ高住 | |
|---|---|---|---|
| ご飯 | 施設が出す | 施設が出すところが多い | 施設によってちがう(別料金のことも) |
| 掃除・洗濯 | 施設がしてくれることが多い | 施設がしてくれることが多い | 基本は自分で。オプションやヘルパーさんに頼む |
| 介護 | 施設の職員がする | 外の訪問介護やデイサービスを、自分で選んで使う | 外の介護サービスを使う |
| 必ずついているもの | 介護まで | 生活の手助け | 安否確認と生活相談 |
うちに当てはめると、こうなる。
- 介護付き有料老人ホームなら、ご飯も掃除も洗濯も、母の介護も、父はほとんど手放せる
- 住宅型なら、ご飯や家事は減る。母の介護は、今のように外のサービスを使う
- サ高住だと、見守りはつく。でも、ご飯や家事は、今とあまり変わらないこともある
「施設に入れば、父は楽になる」とは限らない。どの種類を選ぶかで、父の毎日はかなり変わる。
(出典:厚生労働省「有料老人ホームの類型」、長岡市「高齢者のための住まい」)
お金のこと——払えるかどうかと、残したい気持ち
施設のお金は、両親の年金と貯金から出すことになる。
ただ、親は、子どもや孫のことを心配して、少しは残したいと思っているのだと思う。
それに、実家のこともある。父は、家を売ることは考えていないようだ。
施設にいくら使って、いくら残すのか。家をどうするのか。それは、親の判断能力がしっかりしているうちに話しておかないと、あとからではどうにもできないことがある。
家族信託という仕組みを使うと、自宅も信託の対象にして、「施設に入って空き家になったら売る」といったことを、親が元気なうちに決めておける。わが家は間に合わなかった。その話は、家族信託とは?費用・デメリット・成年後見との違い——間に合わなかった私が、今だから伝えたいことに書いた。
調べてわかったこと——答え合わせ
食費や居住費が安くなる制度は、有料老人ホームには使えない
施設の食費や居住費を軽くしてくれる「介護保険負担限度額認定」という制度がある。でも、町田市のホームページには、こう書かれていた。
「グループホーム、有料老人ホーム等は対象となりません。」
対象になるのは、特養や老健(介護老人保健施設)、介護医療院、ショートステイ。しかも、本人と配偶者が住民税非課税で、預貯金などの資産が決められた額以下であることが条件だ。
つまり、ペット可の有料老人ホームを選ぶなら、この制度は使えない。費用は、基本的にそのまま自分たちで払うことになる。
まず、近くにあるかを知っておく
今すぐ決めるつもりはない。でも、いざというときに慌てないように、今できることはあると思った。
- 「ペット可」で絞り込んで、近くにどんな施設があるか知っておく
- 気になる施設には、頭数・犬の大きさ・本人が世話できなくなったときどうなるか、を直接聞く
- 空きがあるか、空きが出たら連絡をもらえるかも聞いておく
- できれば、見学して、実際に犬と暮らしている人の様子を見る
うちの犬たちは、もう若くはない。犬たちのこれからと、両親のこれから。両方を考えながら、少しずつ調べていこうと思う。
📋 ペット可の施設が近くにあるか、まず知っておく
「いい介護」では、地域や予算に加えて「ペット可」「夫婦・二人部屋」などの条件で施設を探せます。気になる施設があれば、パンフレットの資料請求も無料でできます。
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