認知症介護で眠れない夜。「寝たら忘れる」が私の生存戦略

母のこと

認知症の母のこと、家のこと、子どもたちのこと——頭の中がぐるぐるして眠れない夜がある。

でも私には、自分なりの「リセット術」がある。とにかく寝ること。寝たら忘れる。それだけだ。

雨の日は荒れる。母から「すぐ来て」の電話

予想通り、今日も始まった。

雨のせいか、母は午前中から大騒ぎらしい。身体のどこかに痣を見つけてはもやっとして、そのイライラが「殺す、殺される」という言葉になって出てくる。電話口でわめき散らす声が聞こえた。

「すぐ来て。」

母の日常については、認知症の母がいる実家に親戚が来た日にも書いています。

子どもの発表か、実家か。天秤にかける苦しさ

でも今日は、次女の学校行事があった。

頭の中で、子どもの発表と実家を天秤にかける。どちらも大事。どちらも待ってくれない。人の都合などお構いなしに、母の電話は続く。

ぐるぐると考えながら、それでもとにかく動くしかなかった。

人生最大の危機でも、淡々とやるしかない

今の私は、実家のことや、自分自身のことで、人生最大の危機を感じている。

でも、心配しても何も変わらない。よくなるわけでもない。やるべきことを淡々と進めるしかない——そう言い聞かせながら、毎日をやり過ごしている。

同じような気持ちは、「ながくは続かない」と自分に言い聞かせた、介護の辛い時期にも書いています。

寝ろ。明日になれば、また違う一日

明日の仕事は、朝が早い。

とにかく寝るんだ。どんなに辛い夜でも、朝になれば少し気持ちが変わる。答えが出なくてもいい。解決しなくてもいい。

寝たら忘れる——それが私の、今のところ一番の生存戦略だ。

調べてわかった、「眠れる」ことの大切さ

介護で眠れない夜のことを、調べてみた。

わかったのは、介護者の睡眠不足は「気の持ちよう」じゃなくて、本当に体に影響が出るということ。疲れがたまって免疫が落ちて、風邪をひきやすくなったり、心の余裕がなくなったりする。介護を続けるためには、介護する側がちゃんと休むことが、何より土台になるらしい。

そして、ひとつ大事なことを知った。専門家は「時間があっても眠れない状態が続くなら、介護うつを疑ったほうがいい」と言っている。眠ろうとしても眠れない——それは、立ち止まって誰かに相談すべきサインなんだそうだ。

それを読んで、少しほっとした。私は、眠れている。どんなに辛い夜でも、布団に入れば寝てしまう。「寝たら忘れる」は、なげやりな現実逃避じゃなくて、たぶん私なりの、ちゃんとした生存戦略だったんだ。

だからもし、これを読んでいる人が、夜になっても考えごとで眠れない日が続いているなら——それは頑張りすぎのサインかもしれない。一人で抱えこまないで、ケアマネさんやお医者さんに、一度こぼしてみてほしい。

眠れない夜に、うちで効いたこと

「寝たら忘れる」と言っても、布団に入るまでが長い夜もある。頭のぐるぐるを止めるために、うちで実際に効いたことを3つ書いておく。

①紙に書いてから、布団に入る。頭の中のぐるぐるは、消そうとすると余計に回る。だから消すのではなく、紙に書いて置いていく。母が今日言ったこと、明日電話すること、気になっていること。箇条書きで数行、それだけでいい。書いたものは、あとで受診のときのメモにもそのまま使える(医者に渡す「一枚」を作った——認知症の母の受診前、1週間メモを続けてわかったこと)。

②夜中に、介護のことを検索しない。これは私の失敗から。眠れない夜に「認知症 暴言 限界」と検索しても、出てくるのは不安の材料だけだ。夜中の検索は、答えを探しているようで、実は不安を拾いに行っている。調べものは朝にする、と決めてから、夜が少し静かになった。

③「明日やることを1つだけ」決めて、終わりにする。全部は解決しない。でも「明日はケアマネさんに電話する」とひとつ決めると、頭が閉じてくれる。ひとつで足りないように思えても、ひとつでいい。残りは明日の私が考える。

「時間があっても眠れない」が続いたら

さっき書いたとおり、疲れているのに眠れない状態が続くのは、頑張りすぎのサインだと言われている。眠れない以外にも、食欲がない、好きだったことが楽しめない、わけもなく涙が出る——そういうことが重なっていたら、それはもう「気の持ちよう」の話ではない。

相談先は、難しく考えなくていい。いちばん身近なのはケアマネさんだ。介護の困りごとは、こちらから言わないと伝わらない。言いにくいことを言ってみたら、ちゃんと変わった——その話は別に書いた(ケアマネさんに電話した日——言いにくくても、声を上げてよかった)。

あとは、自分のかかりつけ医に「介護をしていて眠れない」と言っていい。介護の相談ではなく、自分の体の相談として。それから、限界のサインは自分では気づきにくいということも、うちは父を見ていて痛感した(「家がやなんでしょ」——認知症の母の一言が、父の限界を教えてくれた)。眠れているか、食べられているか——それはお互いに見ておくものなのだと思う。

あれから

この記事を書いたころの母は、「殺す、殺される」という言葉が出るほど荒れていた。

今は、薬の調整が効いて、あの頃よりずっと落ち着いている。雨の日の電話も減った。

それでも、眠れない夜が完全になくなったわけではない。介護は続いているし、明日何が起きるかは、今夜のうちには分からない。

だから私は、今夜も寝る。書いて、置いて、ひとつだけ決めて、寝る。眠ることは、逃げることじゃない。明日も介護をする人の、いちばん最初の仕事だ。

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