「早めに申請しておいた方がいい」と言われても、なかなか動けないのが介護の現実だと思う。
私もそうだった。母がアルツハイマー型認知症と診断されてから、介護認定の申請までに約2年かかった。診断を受けたときから、お医者さんに「介護認定を受けてください」と言われていた。その後の診察のたびにも、同じことを言われ続けていたようだ。それでも、父が首を縦に振らなかった。
動いたのは、私だった。
まず市役所に相談に行き、近くの「安心相談室」を紹介してもらった。市が委託している高齢者支援センターの出先機関で、介護のことを気軽に相談できる窓口だ。そこで、攻撃性が強くなってきた母のことを話した。
父が積極的でなかったので、正式な申請にはなかなか踏み切れなかった。でも、緊急性を感じていた私は、抜き打ちで自宅を訪問してもらったりもした。それでも、申請まで2年かかった。
父がようやく首を縦に振った日、私はすぐに動いた。
実は、その日のために申請書も介護認定の流れも、どこでどう手続きするかも、ずっと前から調べて準備していた。父が「やる」と言ったタイミングを逃さないように。
子どもである私たちが代わりに申請することもできる。でも、父が「自分でやる」と言ったので、父が動いた。実は、市役所に行く必要はない。安心相談室に行けば、申請から手続きまで全て完結する。何度も相談に足を運んでいたおかげで、申請はとてもスムーズに進んだ。
認定調査の日、私はたまたま仕事が休みで立ち会うことができた。
事前に母にも話していたが、やはりまた揉めた。でも、調査員の方がいらっしゃると、母はにこやかに応対して、自分でサインまでした。「何でもできる」と言い張るし、父も同じ反応だった。
これは、認知症あるあるだと思う。いつもと違う人が来ると、しっかりして見える。調査員の方も、やりとりのチグハグさは感じ取ってくれていたようだった。私が何度も安心相談室に相談に行っていたこともあり、情報がシェアされていたようで、調査員の方はある程度わかった上で来てくださっていたようだった。私は調査のあと、立ち話で「実際の様子」を伝えた。普段見ている現実を、ちゃんと伝えることが大事だと思った。
認定結果は、要介護1。納得だった。
同時に、父の認定も申請した。安心相談室からの勧めだった。父には持病があり、母の介護による疲弊もあった。父が急に入院となったとき、母がショートステイを利用できるようにしておくためだ。
父の主治医が少し大袈裟に書いてくださったこともあり、実際には介護が必要なわけではないが、父は要支援1となった。備えとして認定を取っておく。これも、介護の大事な戦略だと思っている。
認定が出て、すぐにケアマネさんとの面談になった。
提案は、ノールックでデイサービスだった。他のサービスの話は出なかった。それよりも、まず母本人の要望を聞いてくださり、空きのあるデイサービスを何件かピックアップして、すぐに見学を勧めてくれた。
母がいる前で、ケアマネさんは明るくテキパキとこう言った。「○○さんがその気になっているうちに、決めちゃいましょう。」私はヒヤヒヤしたが、意外にも母はその場でとても前向きで、しゃんとした受け答えをしていた。不思議だった。
だから、父が「まだ病気と思えない」と感じてしまう気持ちも、わからなくはない。こういう瞬間があるから、父はつい母にまともにぶつかってしまい、いつも喧嘩が絶えないのだと思う。
結局、2か所見学して、気に入った方に通うことになった。このケアマネさんの動きの速さには、本当に助けられた。
要介護1の認定が出た。でも、正直に言うと、その時点では何も変わらなかった。
認定が出た喜びもつかの間、次の地獄が待っていたからだ。デイサービスに通わせるまでの、あの1週間のことは、別の記事に書いた。
それでも、認定を取っておいてよかったと今は思っている。認定があるからこそ、サービスが使える。サービスが使えるから、父が少し休める。その積み重ねが、介護を続けることを可能にしてくれている。
最後に一つだけ伝えたいことがある。介護認定は、なるべく早く申請してほしい。団塊の世代が高齢者となってきた今、これからはますます時間がかかるようになると、安心相談室の方も言っていた。「まだ早いかな」と思ったときが、申請のタイミングだと私は思っている。
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