財布は、どこ?——母が父を責め続けた、ある一日の記録

母のこと

10月13日

実家に行った。

機嫌はまずまず。父は疲れ切っている。

買い出しのために、私が帰ろうとすると、母の機嫌に変化が…。

「一緒に行こう」と誘うと、母が財布を探し始めた。

「隠しちゃった?」私が冗談を言い地雷を踏んだ。

私に怒れば良いのに、変化球だ。

「私がお金をちょろまかしていると思ってるんでしょ。」「家計のお金で自分のものなんて買ったことない!」「この人は私がお金を勝手に使っていると思っているのよ」

と父に対しての文句が始まった。

それはネチネチと父にとっては辛い時間が始まった。

財布は見つからない。

母は、ブツブツと父に悪態をつく。

私と娘はなんとか状況を変えようといろんな事を言うが、効果なし。

父は2階に避難した。それなのに追いかけて文句を言う。

父は外に避難した。縁側に腰掛けた父の隣に追いかけて来て座る母。逃げる父。

結局はなんとか母を連れ出し、買い物に出かけた。

出かけたら出かけたで、帰りたがる。

「ムカつくお父さんの顔なんて見ないほうが良いじゃん。まだ帰らなくていいじゃん」

私が言うと、「ムカついてないよ。お母さんがお父さんをいじめてるだけだから。」

と言う。「自覚あるの?」と私が言うと、笑う母。

ショッピングモールの駐車場まで来たのに、帰りたい母の希望を聞いて、実家に帰った。

それなのに、また父に悪態をつく。父がまた2階へ逃げた。

私は本当に疲れて一度帰ろうと母に挨拶をした。

するといきなり、「買い物行くんでしょ?」と母が言う。

さっき駐車場まで行ったのに、もう一度行くことになった。

頭がおかしくなりそうだ。

夕方黄昏時、また母が父をいじめて、2人がやり合うことにならないか???

心配しても仕方ない。

顔を上げて、つきぬけろ!

「盗った」と責められるのは、いちばん近くにいる人

あとで知ったことがある。財布やお金が「なくなった」「盗られた」と思い込んでしまうのは、認知症によくある症状のひとつで、「もの盗られ妄想」と呼ばれるらしい。

そして不思議なことに、疑われるのはたいてい、いちばん近くで世話をしている人だ。母にとっては父であり、私だった。いちばん支えている人が、いちばん責められる。理不尽だけれど、これは母が意地悪なわけではなく、病気がそうさせている——そう思えるようになるまで、ずいぶん時間がかかった。

もし今、同じように親から責められて、心がすり減っている人がいたら。それはあなたのせいでも、努力が足りないからでもない。どうか、自分を責めないでほしい。

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